作る教室の属性
さて、あなたが開きたい自宅教室とは、何を作る教室でしょう? ここで大事なのは、私たちは「作品を作る教室」という点を忘れてはいけないことです。
世間には人気サロンやサロネーゼを自称する方がたくさんおられます。でもそのほとんどが、料理やパン教室、スイーツといった「食」をテーマにした教室です。「ハンドメイド」は決して「食」とは同じくくりにはならないことを知っておきましょう。生徒さんが満足するポイントが全く違うからです。
ざっくり分けると自宅教室は「知」、「食」、「創」、「体」の分野にわかれます。「知」は語学や音楽、パソコンなどの学習系の教室。「食」は料理、スイーツ、パンなどのフード系。「体」はエステ、ヨガなど。そして「創」は私たちの
ように作品を作る教室です。
持ち帰る作品があるということの意味
「創」の分野で一番特徴的なこと、それは持ち帰る作品があるということです。他の3つにはありません。
例えばこんなシーンを想像してみましょう。それはご自身のレッスンが終わった後のこと。生徒さんのご自宅での様子です。
作品を持ち帰り、部屋に飾っている生徒さん。洋服やバッグなら身に着け、鏡を見ている生徒さん。誰もが作品を見るたびに、眺めるたびに、心の中で作品と対話しています。
「綺麗~」とか、「もっとこうすると良かったかな~」とじっくり見入るときもあれば、何気なく見ていることもあるでしょう。作った人にとっては、買ったものとは違う特別な思い入れがあります。おそらく作り手でもある、あなた自身も思い当たるのでは?
作品を見れば、教室の様子が思い出されたり、先生の顔が浮かんだりもします。他の人の作品はこうだったとか、自分の出来栄えもなかなかグッド! とかいろいろ感じるでしょう。
作品はあなたの教室の発信塔
つまりレッスンは終了しても、あなたの知らないところで、作品はあなたのエッセンスを発信し続けているということです。
ここが作品のある教室の「肝」といってもいいくらい重要なところです。
ハンドメイド教室には「作る作品」にフォーカスした生徒さんへのアプローチ方法がとても大切です。
生徒さんが自宅で作品を見ながら「素敵! 満足! 作って良かった!」そんな気持ちになってもらえたら、問題なく、あなたの教室はその方にとってまた行きたい場所となります。
不愉快なコトも作品に付加される
反対に「気に入らない」「私はこうしたかった」「こんなはずじゃなかった」そんな残念な思いが湧いてきたとしたら……それでも作品はそのまま発信し続けてしまうのです。教室の外のことは、もう先生にも、どうすることもできません。作品が教室の価値を決めるといっても過言ではないのです。
これがモノづくり系の教室の特徴です。持ち帰る作品のない「知」「食」「体」とは決定的に違う点です。
生徒さんはプチ職人気質
さらに特筆すべきは、ハンドメイド教室に集う生徒さんは「黙々と作っている時間が好きなんです」とはっきりとおっしゃる方が少なくありません。いわばプチ職人気質。作品に取り組む集中の中でリラックスする。心地良く職人モードになれる非日常を体験しに来ています。
「好きなものに向き合える時間」。集中することがリフレッシュになるのがハンドメイド系の生徒さんの特徴なのです。そしてその中で自分の手で作った作品は、買ったものとは圧倒的に違う価値が付加されて、自宅で飾ったり、眺めたり、使ったりするのが楽しくなります。
アーティストはこだわりが強い
「作る」が好きで来ている生徒さんは先生の作品へのこだわりにも敏感です。ティータイムとデパ地下のスイーツが用意された教室よりも、次月の作品に添えるたったひとつのリボンにこだわり、先生が3日走り回って、探し選んだステキなものが用意されている教室のほうがとても魅力的に思うのは私だけでしょうか? そこがプチ職人、共通のときめきなのです。
だからこそ、こだわりを満たす
最新の情報や素材や珍しい技法にも、あなたの教室に来る生徒さんはみなワクワクします。作ることが好きな人の喜びのツボ。ぜひここを押さえておきましょう。
レッスンは普通のお宅で十分です。豪華なリビングのしつらえや、ティータイムに個性を演出するのも楽しいことですが、それは先生のお楽しみの範囲で。なくても問題ありません。
「モノ」作りの教室の焦点は、1にも、2にも作品です。
ティータイムはあってもなくてもいい
もちろん、ティータイムも癒しの時間ですが、ハンドメイドが好きな人は好きなものに触れ、作っている集中の時間に自然とリフレッシュしているもの。アトリエレモンリーフでは、セルフサービスでコーナーにお茶を用意していて、全員着席してのティータイムは設けていません。
それでもきっちり、オプションとしてティータイムも設ける場合は、配慮も必要です。時間のない方、会話に合わせることが苦痛の方もいらっしゃるからです。参加自由のラフな雰囲気が良いと思います。またティータイムなど、一度サービスを定例化すると、なくすことが難しくなるのでしっかり考えてから実行しましょう。
長時間のおしゃべりが嫌いな人もいる
長時間すわっておしゃべりするとなれば、メンバー構成も配慮が必要な場合があります。会話によって最後の最後で生徒さんが不愉快になってしまっては台無しです。実はおもてなしの「食」の先生方が気を遣っているのは、そこなのです。それはまた後述します。私自身の教室ではティータイムは年末年始のみにしています。デイリーには作品制作に安心して集中できる環境が何よりと思っています。
魅せるのはティータイムより、作品!
ティータイムはあってもなくてもOK。やるからには配慮を。もっともエネルギーを注ぐべきは、本気で、良い作品を提供しようということにつきます。先生のその気持ちは「作る」が好きな人の心の琴線に必ず触れます。生徒さんは先生のセンスに触れながら、自分で作った「世界にひとつの作品」をその手に持ち帰ります。レッスンの後も、暮らしの中で、眺め、楽しみ、触れて過ごします。
教室の先生のセンスとそこに集う生徒さんのセンスは似ていて、好きな雰囲気が共通していることが多々あります。そう考えると、ものづくりが好きな人は技術のレベルの差こそあれ、ハンドメイド仲間。先生の心意気を感じる魅力ある作品を提案することが、両者の絆を育む上で、とても重要になってくることがお気づきいただけるでしょう。
あなたから離れても、教室のエッセンスを発信し続ける作品たち。 さらに次の章でその魅力を具体的にご紹介します。